2012年6月2日土曜日

誕生日と「わが母の記」

6月1日は私の誕生日でした。
どこかでドンチャン騒ぎ(これって死語?)をするわけでもなく、
フツーの一日をフツーに過ごしておりました。
それでも行きつけのパブで大好きなTalisker 10yearsっていう
ウイスキーをチビチビなめておりました。
日が変わった午前0時、
誕生日であることをお店のマスターに言うと一杯ごちそうしてもらった。
さらに他の常連のお客さんからも一杯。
なんだかいい年こいてんのにこっぱずかしくもうれしい気持ちになりましたな。
もう充分自分には出来過ぎた誕生日だと思いました。
facebookにもメッセージを寄せていただき皆さんへの感謝の気持ちが一杯。
しかもこの6月1日に友人ご夫妻に第一子となる御長男が誕生。
新しい命が誕生した日に自分の誕生日が重なり、勝手に光栄な事と思いました。
さて音楽の方ですがこれがいけません。
自分の演奏が必要ない音ばかり吹いている様で自分のヘタクソさがますます気になる。
けっこういい年ですよ、ワタス。
なのに年相応、音楽的に経験を感じさせる演奏ができているかどうか。
あ、グチっぽくなりますな、こりゃ。
今秋は久しぶりにCOTICOもやるのでいろいろなんとかしないとなあ...。
誕生日に自分の未熟さを改めて実感したのでした。

はい映画。
「わが母の記」
文豪、井上靖原作の同名自伝的小説を映画化したもの。原作は読んだ事ありません。

昭和30年代中盤からおよそ10年間の物語を同じ俳優たちが演じている。
40年くらい前の時代を背景にした映画だけど画面からは現代的な空気が漂う。
今に通じる家族の普遍的な話を表現しようって映画だからかなあ。

主人公は作家。その創作の源や生きるエネルギーは
幼い頃、母に捨てられたと思って、
本当の母の気持ちを受け入れられずにいる主人公の母への反発からきている。
しかし離れて暮らす年老いた母に痴呆の症状が出てきて
主人公の家族や主人公の2人の姉妹などと母の世話をしていくうちに
初めて母の想いを受け入れられるようになる。

痴呆、戦時中の困難な事情と重い背景が物語にはある。
でもテーマが母と息子に絞っている事、
また主人公家族の繋がりが映画からしっかり感じられる事が
物語を柔らかく包んでいるように思えた。
主人公役の役所広司は時代劇より現代劇の方が好きだなあ。素晴らしい演技です。
主人公の2人の姉妹役、キムラ緑子と南果歩、素晴らしい。
最初の方で少ししか出ませんが三国連太郎、印象深い。
しかし何と言っても母役の樹木希林。名演です。
温かい気持ちになれる映画だと思います。
音楽もよかった。

冒頭、小津安二郎の「浮草」のワンシーンをイメージさせる雨の場面があって楽しかった。
「浮草」では男女の決定的な決裂シーンだが、
その男女も最後には再びよりを戻し共に汽車にゆられて新しい土地へ向かう。
それと、映画の内容とは関係ないけど主人公のセリフに
アメリカのギブアンドテイクと違って、
日本の持ちつ持たれつにはお互いの利益を無にする相殺の意味合いがある、ってのには
なんだか妙に納得したのだった。